関連当事者取引の詳細およびガバナンス上の問題
+ (i) 私的な不動産の購入
フジテックは2013年2月、ドムス元麻布の104号室(427平方メートル/4,600平方フィート)を購入しました。その購入価格は開示されていません。このマンションは、高級住宅街の南麻布に位置し、このマンションの現在の市場価値は、現地不動産仲介業者の試算などを踏まえると、およそ7.3億円と考えられます。 一般に入手可能な不動産登記のデータベースを調査した結果、フジテックが購入してからわずか半年後の2013年9月に、内山社長の妻が、その保有する不動産の登記簿の自分の住所地としてこのマンションの所在地を記載していることが判明しました。その後、2015年7月には、内山社長の息子の内山雄介氏(当時28歳)が、同氏が保有する内山家の資産管理会社であるサント株式会社の法人登記簿上の代表取締役である自身の住所として、このマンションの所在地を記載しています。 内山社長の妻がこのマンションを自身の住所として登録していたことをオアシスが知る前に、オアシスの質問に対して、フジテックは書簡で購入の経緯を次のようにオアシスに説明していました。 「首都圏での当社ステータス向上に向けたトップセールス強化を目的に、社用迎賓施設及び役員社宅として運用しておりました」 この説明には全く信憑性がなく、なぜこのマンションを内山社長の妻や息子が住所として登記簿に記載したのかについては全く述べられていません。オアシスは、そもそも、なぜそのような目的のために超高級マンションが必要なのか、非常に理解に苦しんでおります。日本の他の上場企業においてこのような状況を見たことがありません。 オアシスは、調査により得られた事実を踏まえると、このマンションが内山家の個人的な使用のために取得されたのではないかという疑問を持っております。オアシスが考えるこの仮説は、その後、このマンションが2021年にフジテックから内山雄介氏の私的資産管理会社であるサント株式会社に売却されたという事実から、ますます真実味を帯びていると考えています。また、オアシスはサントがドムス元麻布101号室を保有していることを把握しています。オアシスは101号室にも、内山家が居住していることが考えられます。この事実は、104号室が内山家のために購入されたということをより確かなものとしています。そうであれば、内山家がこの住居の家賃を支払っている情報が開示されてこなかったのはなぜなのか、という更なる疑問も浮かんできます。即ち、相場より低い低廉な家賃でこのマンションを提供していたのであれば、その相場との差額が役員への未公表の追加報酬として認識されるべきだったのではないかという疑問が生じます。また、その報酬にかかる税金、監督官庁への報酬の開示などについても、さらなる疑問が浮かび上がってきます。 また、ドムス元麻布104号室がフジテックから内山家が保有する法人のサントに売却された時の価格は、著しく低廉であったのではないか、と疑っています。マンション価格はおよそ7.3億円であったと考えられる一方で、2022年5月13日に開示された2022年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書によると、有形固定資産の売却による収入は合計でわずか4.71億円でした。内山社長が権限を濫用している更なる一例ではないかと、オアシスは考えています。 上場企業の社長家族が会社所有の超高級マンションを住所としているこのような事例は、オアシスはこれまで見たことがありません。内山社長がその地位を濫用し、フジテックと株主の犠牲の上に、自分とその家族の利益を図っているとオアシスは固く信じるに至りました。
プレゼンテーション資料はこちら 短信を見る:2022年3月期
+ (ii) フジテックによる内山社長が保有する法人への巨額な資金の貸付
内山家が保有する法人はフジテックから巨額の借入をしていた
少なくとも2001年3月期から2015年3月期までの14年間、内山家が保有する法人にフジテックから債務保証がなされており、そして、内山社長が保有する法人はフジテックから融資を受けています。 最も金額の大きい時には、それぞれ、債務保証で60億円近く、借入では41億円に達していました。これらの私的融資は、フジテックの手元資金の2割を超えることもありました。このような一連の貸付は、他の上場企業では見たことがありません。
非効率的な資本配分
フジテックが設備投資やM&Aによる成長投資ではなく、内山社長の個人的な利益のために資本が投下されてきたことは衝撃的です。フジテックによる内山社長が保有する法人への貸付は、フジテックの資本コストを大きく下回る金利でなされ、企業価値を大きく毀損することとなったと思われます。 これまで、フジテックは設備投資やM&A、そして、株主還元にも消極的であり、株主は長年不満を持ってきました。その一方で、フジテックは内山社長が保有する法人への現金の貸し付けに対しては、何ら躊躇なく行っていたのです。 もし、この資金を早期にインドや中国事業のプレゼンスの獲得のために投下していれば、フジテックは大きく発展し、競合他社に遅れをとることもなかったはずです。しかし、内山社長の支配するフジテックは、既に述べた疑問のある関連当事者取引を内山家が保有する法人と行う一方で、他社の後塵を拝する結果となったのです。
ローンが適切に担保で保全されていなかったと考える理由
さらに、内山社長が保有する法人がフジテックから受けた多額の借入に対して、フジテックに担保を提供したという事実が一切、確認できていません。実際、当局への提出書類や、不動産登記情報によれば、この時期、内山家及び、関連法人が保有するフジテック株や主要不動産のほとんどが、フジテックの借入とは別の、銀行からの借入の担保に使われていたことが判明しています。銀行が担保を必要としたのに対し、フジテックは無担保で内山社長が保有する法人に貸付けていたのではないかという疑いがあります。この疑いが事実とすれば、内山家以外の他の株主を不公平、不平等に扱っていると言わざるを得ません。
返済期限の頻繁な延長
内山社長が保有する法人は、当初の返済期限にフジテックからの借入金を返さず、フジテックへの返済を3回にわたり延期しています。 当初、2006年3月期に借入金を返済する義務がありましたが、その期限には返済されず、借入期間が5年に延長され、返済期限が2009年3月期までに変更されました。しかし、2009年3月期には再び2012年3月期に期限が延長され、その後さらに2015年3月期へと延長されました。他方で、内山社長が保有する法人への銀行からの借入は、フジテックへの借入期限を一度延長した後、返済されていると目され、随分と対照的な条件で返済完了となりました。
フジテックが内山社長に請求した金利は著しく低金利
内山社長が保有する法人への貸付金の実効金利はわずか0.4~1.2%でした。有価証券報告書においてフジテックはこの金利が適正な市場金利であると主張していますが、貸付金が適切に担保されていたかどうかという疑問や、頻繁な返済の延長を考慮すると、金利水準が適正という主張は納得できたものではありません。また、内山家及び、内山家が保有する法人の資産の大半は銀行からの借入金の担保として提供されていたため、内山社長及び内山社長が保有する法人の与信余力は乏しく、そもそも、返済期限の延長が必要なことから、返済能力に欠いていた可能性も十分考えられます。このような状況を踏まえると、仮に内山社長が保有する法人への貸し付けがビジネス判断として合理性があったとしても、フジテックはもっと高い金利を要求するべきだったでしょう。 更に、内山社長が保有する法人に長期にわたって多額の資金を貸した経営上の合理性について、フジテックからの回答をオアシスは待っております。もし仮に、当時、この資金を自社の事業に投下していたら、今日のフジテックは大きな成功を遂げていたことでしょう。
プレゼンテーション資料はこちら 該当する有価証券報告書:2004年3月期、2005年3月期、2009年3月期、 2015年3月期
+ (iii) フジテックから内山家が保有する法人への不可解な賃料の支払いについて
内山家が保有する法人への家賃の支払い額の急騰
フジテックから内山家関連企業へ支払われた年間不動産賃貸料についても、さらなる調査が必要です。有報によると、これらの賃貸料の支払いは2001年以降に発生しています。2014年3月期の内山家関連企業への支払賃料は5400万円。これが2015年3月期には1億4100万円 に増え、2016年3月期には2億2900万円になりました。このように、支払賃料が増加しているにもかかわらず、オアシスでは内山家が関連する企業からフジテックが借りている建物の賃借状況に目立った変化は確認できませんでした。これもまた、内山社長の個人的な利益を目的とした取引の一例なのではないかという疑念を払拭できません。
プレゼンテーション資料はこちら 該当する有価証券報告書:2015年3月期
+ (iv) 不可解な、内山社長が保有する法人への会社持分の売却について
2015年、フジテックは179百万円を対価として非公開の会社の持ち分を内山社長が保有する法人に売却しました。フジテックの2014年3月期と2015年3月期の有価証券報告書を比較しても、この関連当事者取引に関するような子会社の株式保有状況の変更や新たな子会社の設立は確認できませんでした。フジテックが買い手を広く募集して最高値で売却しようとせずに、内山社長が保有する法人にそのまま売却するという行為について、オアシスとしては、その経営上の合理性を理解することができません。フジテックの有価証券報告書は、この取引は第三者機関による評価に基づいていて公正としていますが、株主にはそれ以外になんらの詳細な情報が伝えられていません。私たちは、この取引の正当性を疑問視しており、フジテックに対し、内山社長が保有する法人にどのような持分が譲渡されたのか、及びその譲渡の妥当性を説明するよう求めています。
プレゼンテーション資料はこちら 該当する有価証券報告書:2015年3月期
+ (v) 内山社長が保有する法人の行った投資の失敗を補填させるため、その物件をフジテックが買い取った疑惑
2006年12月、内山社長が保有する法人は、公的機関からレクリエーションスポーツ施設をおよそ、2億3950万円で買収し、フィットウィル彦根と改称しました。フィットウィル彦根は、卓球、水泳、フィットネス、文化教室などを一般に公開していました。 2007年4月24日の第166回衆議院決算行政監視委員会第三の議事録によると、フィットウィル彦根は内山社長が保有する法人に売却される直前の決算期では、かろうじて黒字を維持しているような状態でした。フィットウィル彦根を買収した内山社長が保有する法人は、フジテックに施設利用料を請求するようになりました。オアシスは、この支払いの真の目的はただ一つで、内山社長が保有する法人が支払ったフィットウィル彦根の潜在的な損失と運営コストを補填するための支払いを「使用料」として正当化していたのではないかという疑念を持っております。フジテックは約2年間で1800万円の使用料を支払いました。そして、その後の2010年3月期にフジテックは内山社長が保有する法人からフィットウィル彦根を2億5200万円で買い取っています。これによって内山社長が保有する法人は、ほとんど利益が出ていない、あるいは赤字と目される施設から利益を得ることができたと考えられます。しかし、このフィットウィル彦根は後に閉鎖されることになりました。 フジテックにとって、この取引の合理性には深刻な疑問点があると考えています。
プレゼンテーション資料はこちら 該当する政府資料:2007年11月社会保険庁資料 該当する有価証券報告書:2010年3月期
+ (vi) 内山家の関連企業2社と密接な関係にある個人税務アドバイザーへの報酬の支払いについて
フジテックは、公認会計士である篠原祥哲氏を税務アドバイザー(篠原氏の事務所ホームページによると顧問となっています)として起用しています。 フジテックは、大手の会計事務所(太陽有限責任監査法人)を起用しているにもかかわらず、別途、一個人またはその小規模な会計事務所と会計・税務関連の顧問契約を締結する必要があるのか疑問であり、異例に思えます。 そして、篠原氏の事務所の住所が、内山家の2つの資産管理会社(内山社長の息子の内山雄介執行役員が主に保有する法人であるサント株式会社と、内山社長が保有する法人である株式会社ウチヤマ・インターナショナル)の法人登記上の本店の所在地として使われていることをオアシスは発見しました。このように、篠原氏の事務所と内山家の2つの資産管理会社は不思議なほど密接に関係していることから、篠原氏と内山家との深い関係に基づいてフジテックは篠原氏に報酬を支払っていたのではないかと推測されます。また、残念ながら最悪の場合、本来、内山家の関連企業自らが支払うべき報酬をフジテックが代わりに支払っていた可能性さえもあります。