フジテックの調査報告書に対するオアシスの反論

フジテックは、2022年5月30日に、オアシスから指摘された関連当事者取引について「当社株主による主張に対する取締役会決議に関するお知らせ」を公表し、5月29日付の調査報告書も併せて開示しました。

この調査報告書は、内山社長に責任がないとするフジテックの主張の根拠に全くなっていません。寧ろ、オアシスが提起した問題が事実であることの根拠を示しています。また、調査報告書は、内山社長が行った権限を濫用したガバナンス上の問題について、新たに詳細な情報を提供し、フジテックと他の株主を犠牲にして自分自身を利する内山社長の試みを詳細に説明しています。調査報告書で開示された事実は、長年にわたり、コーポレート・ガバナンスの原則に反する権限濫用を行ってきた内山社長はがフジテックの取締役として不適格であり、次回の総会で株主は取締役再任議案に反対票を投じるべきである、というオアシスの主張を裏付けるものであります。コーポレート・ガバナンスの最も基本的な原則を理解している人であれば、彼の一連の利益相反取引の問題が一線を超えたものであることは明らかでしょう。

今回のうわべを取り繕っただけの、欠陥だらけの調査に基づき、フジテックの取締役会は、フジテックの関連当事者取引に関する法的問題やコーポレート・ガバナンス上の問題はないと結論付けています。株主は簡単に騙されてはいけません。以下に示すように、今回新たに明らかになった事実は、フジテックのコーポレート・ガバナンスが極めて不十分であることを示すものであり、そのいずれの問題もその根源は内山社長の権限濫用にあります。

フジテックが行った調査結果に対するオアシスの回答書では主に以下の2点を指摘します。

I.       調査の手続と手法そのものについて重大な欠陥があること。

II.    オアシスが行った調査報告書の詳細な分析によれば、オアシスが主張している疑義の事実関係の調査として極めて不十分であり、寧ろフジテックのガバナンスの問題が深刻であることを更に浮き彫りにしていること

 

I.                 調査の手続と手法そのものについて重大な欠陥があること

 

1.     独立していない調査者による調査報告書である

フジテックは、本調査報告書が社外取締役2名と弁護士1名によって実施されたとしています。

「2022年4月1日、(中略)ともに社外取締役である杉田伸樹氏及び山添茂氏が本件の調査を担当することとし、当社は、本件のような調査案件について専門性を有する西村あさひ法律事務所所属の平尾覚弁護士に対して、関連する事実関係の調査及びその結果判明した事実関係に対する法的評価を依頼いたしました。」

「なお、平尾弁護士は、これまで当社の法律事務を取り扱ったことは一度もなく、当社としましては、本件の調査の実施にあたり独立した専門家であると考えております。また、平尾弁護士が所属する法律事務所と当社の間には、長年にわたる顧問関係もありません。」

しかし、フジテックは西村あさひ法律事務所の藤本欣伸弁護士を長年会社の弁護士として使っています。オアシスは2020年以降、オアシスが内山社長との関連当事者取引を指摘してから特に、フジテックとの面談で何度も藤本欣伸弁護士と会っており、フジテックの5月20日のプレスリリースや調査報告書では「当社の代理人弁護士」として言及されています。以下の通り、フジテックからオアシスへのメールの抜粋文から明らかなように、西村あさひ法律事務所がフジテックを代理していることをフジテック自身が認めています。

2022年3月30日、フジテックIR担当執行役員からオアシスへの電子メール

「関係者間取引に関するご質問につきましては、法的規制との関係もあるため、弊社弁護士と御社弁護士との間でご面談をいただきたいと考えております。当社の弁護士は西村あさひ法律事務所の藤本弁護士にお願いをしております。」

フジテックと西村あさひ法律事務所は明らかに長年の関係にあり、それ以外にも、藤本弁護士は2020年のフジテックによるAmalgamated Lifts Limitedの買収にも協力したことをオアシスは把握しています。

この事実に鑑みますと、フジテックが調査報告書を作成した西村あさひ法律事務所との間に顧問関係がなかったとして西村あさひ法律事務所の独立性に問題がないかのごとき主張をすることは、理解しがたいことであります。

おそらく、報告書は、西村あさひ法律事務所との既存の長年の関係を言い逃れるために、「顧問関係」という専門用語を使うことによって、“顧問関係”がないから独立性に問題がないとしてこの問題を曖昧にしようとしているのでしょう。これは小手先の言い逃れの言葉としては正しいとなるのかもしれませんが、その関係の実態に鑑みれば到底納得できるものではありません。このような言い逃れの主張は、本調査報告書全体を通じて看取できる、内山社長による明らかにコーポレート・ガバナンスに反する黒い権限濫用行為を、白と言いくるめようとする試みの一例にすぎません。

さらに、平尾覚弁護士は西村あさひの企業法務の危機管理チームに所属していることに注目したいと思います。2020年7月開催の東芝定時株主総会に関して、東芝の監査委員会に不正はなかったとする報告書を提出したのはまさに西村あさひのこの危機管理チームでした。しかし、その後、株主から選任された3人の弁護士による真に独立した調査によって、その調査結果は覆されています。オアシスは、この東芝の件と、前述のフジテックと西村あさひ法律事務所との長年の関係に鑑みて、4月28日、フジテック社外取締役に対し、今回の調査で西村あさひを採用しないように要請ました。

平尾覚弁護士と西村あさひ法律事務所は、フジテックの関係者間取引の調査を行うのに適した人物ではないことは明らかであり、株主は彼らの調査報告書をそのまま信用してはいけません。少なくとも、西村あさひが独立した立場ではなく、フジテックとの関係を隠していることを、オアシスは認識しています。

 すべての株主は以下の質問をフジテックに直接問うて確認してください。

1)     フジテックは2020年度、2021年度、2022年度に西村あさひ法律事務所にいくら報酬を支払ったのですか?

2)     フジテックと藤本欣伸氏との関係が“顧問関係”に該当しないとしても、フジテックはこの弁護士との関係をどのように説明しますか?

3)     なぜフジテックは、西村あさひ法律事務所が関連当事者取引の調査を担うのにはコンフリクトがある、というオアシスが伝えた懸念を無視したのでしょうか?

4)     なぜ、フジテックはこの西村あさひ法律事務所に調査を依頼したのでしょうか。

5)     重大な欠陥があった西村あさひ法律事務所の危機管理チームによる東芝の監査委員会宛て調査から、彼らはなにがをどう改善したとフジテックはお考えですか?

 

詳しくは、以下の検証資料をご覧ください。


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2.     5月20日の内山社長による公表文

オアシスが指摘した関連当事者取引は「当社にて至急で調査いたしましたが、事実ではない」というフジテックからの5月20日の公表文(以下「5月20日の公表文」といいます)がありますが、その公表については、今回の5月30日付の公表文でも調査報告書でも何ら触れられていません。オアシスは、5月20日の時点の公表文の発表は取締役会の承認を受けたものではなく、調査はその時点でまだ継続中であり、今回の調査報告書によれば、5月20日の時点ではまだ調査を継続すべき未解決の問題が残っていたことが示されています。さらに、オアシスは5月19日に関連当事者取引を極めて多岐にわたって分析した結果を発表しており、その十分な調査を行うには時間が足りず1日ではとても終わるものではなかったはずであると考えています。

以上に鑑み、調査報告書には5月20日の公表文に関する以下の点が記載されていない問題があります。

1.           調査が完了したとする5月20日の公表文の記載に反して、その時点では、調査は継続中であったこと。

2.     内山社長が5月20日の公表文について、取締役会の承認を得ていなかったこと。

いずれも重大なガバナンス違反であり、内山社長が取締役会に相談することなく、一方的に行動できることが明らかになっています。このような権限の濫用は止めなければなりません。

また、調査が完了する前の5月20日に、「本取引は、いずれも所定の法令・手続等に従ってなされた適法かつ適切な取引及び行為であり、企業統治上も問題はない」と発表したことは、平尾弁護士による調査の終了前に内山社長が調査結果の結論を既に決定しており、そもそも、真に独立かつ誠実な調査を平尾弁護士に行わせる意思がなかったことを明確に示しているものと評価できます。

 

すべての株主は以下の質問をフジテックに直接問うて確認してください。

1.     平尾弁護士の調査が完了する前に5月20日の公表を行った内山社長を叱責した取締役はいたのでしょうか?

2.     5月20日の公表に関して取締役会の承認を得ていないという点で、内山社長はその過ちを認めているのでしょうか?

3.     内山社長は、明らかに取締役会の承認なしにフジテックを代表して勝手に公表する権限を持っていたといわざるを得ませんが、取締役は、これが良いコーポレート・ガバナンスの姿であると信じているのでしょうか?

4.     なぜ取締役会は、内山社長が自らの行為に関する疑惑を含む問題について取締役会の承認なしに勝手に問題なしと決定している事態を止めることができないのでしょうか?

5.     このような状況下で取締役会が内山社長を止められなかったのであれば、今後、内山社長が独断で勝手に決定をしようとするときに、取締役会がそれを阻止できるとなぜ株主は信じられるのでしょうか?

 

3.     うわべだけを取り繕った調査である

調査報告書では、取締役会の承認という形式的な事実の存在、内山家と利益相反がある場合に取締役会の決議に参加していなかったこと、監査役等からの異議申し立てがないことを奇貨として、すべて問題なし、と結論づけています。

しかし、このようなうわべだけをなぞった調査では十分ではありません。この調査は、内山社長や経営陣の説明が妥当かどうか、あるいは、そもそもその説明する事実関係が真実かどうかを調査・評価することさえ行わず、経営陣の当時の発言を鸚鵡返しにしただけのうわべを取り繕った調査です。調査報告書は、お粗末なガバナンスに対する言い訳を並べただけであり、詭弁を弄して内山社長を逃がしているように読めます。

そのような問題の詳細はこのオアシスの反論文で後ほど説明しますが、調査報告書にはそのような問題の数多くの例があります。以下はその一部です。

a.  内山社長の息子へのドムス元麻布のマンション売却について、調査報告書では、取締役会の決議を経ており、売却価格は不動産業者2社の見積もりの平均値であって問題なしと結論付けています。オアシスは以下の点について、調査報告書では何も疑問を呈していないのがあまりにも衝撃的な驚きでした。

  • オアシスが得ているフジテックの元社員からの情報によると、内山社長は、オアシスによる関係当事者取引の調査を気にし始め、ドムス元麻布に関して安い賃料しか内山家に請求していないと指摘を回避するために、内山社長の指示でドムスを売却したとのことです。独立した第三者が真剣に行った調査なら、このような事実が明らかになったはずでしょう。

  • なぜフジテックは、マンションを一般市場に出さずに、内山雄介氏に直接売却するという優遇を与えたのでしょうか?

  • もし、フジテックがドムス元麻布の売却を希望していたのであれば、なぜ内山雄介氏から提示された価格、すなわち、二つの見積もりのうち一つの価格を下回る価格に決定するのではなく、最も高い価格で売却するために、外部の市場で売却しなかったのでしょうか。

b.     調査報告書は、フジテックが超高級マンションを購入した上で、接待の主催者が「レセプションエリア」の隣に住む必要があるため、内山社長に居住することを依頼したというフジテックの説明をそっくりそのまま受け入れています。

  • 調査報告書では、なぜかこの点に疑問が持たれていません。社長が賓客を接待する場所そのものに住む必要性は全くなく、これは一般的な慣習ではありません。

  • 内山社長一家のこのドムス元麻布での生活が、客観的に考えて必要であったかどうかについて、調査報告書では全く検証・評価されていません。

  • 調査報告書では、住居エリアとレセプションエリアを分けるという主張の妥当性を評価せず鵜呑みにして受け入れています。

  • 調査報告書では、日本の他の企業では行われていない極めて異例な超高級マンションの購入理由がそもそも合理的であったかどうかについては評価されていません。 

c.      報告書は、このアパートが常に迎賓施設として使用されていた証拠があると主張していますが、どのような証拠が集められたのか、迎賓施設としてドムス元麻布が何回使用されたのか、何ら詳細が記載されていません。

d.     フジテックがフジテック高輪ビルの特別目的会社(SPC)の一部を内山家に売却したことについて、調査報告書では、売却の理由として、「首都圏の再開発の状況」や「フジテックの営業状態の変化」によるものとしています。

  • 調査報告書は、上に掲げられた理由に対しての評価や分析をせずに、どちらも真実であるとそっくりそのまま受け入れて問題なしと結論付けています。

  • 真に独立した調査者であれば、行政が高輪ビル周辺の再開発を計画しているため、一帯の地価が上昇することは当時明らかですので、内山社長自身だけが得をするように、フジテックはフジテック高輪ビルを保有するSPCの持分を内山氏に売ったのではないかという疑問を持つはずです。

e.     調査報告書は、フジテックが福利厚生のためにフィットウィル彦根を取得したという内山社長の釈明をそっくりそのまま受け入れていますが、その論拠を評価できておらず、明らかに欠陥があります。

  • 公共の運動施設を購入しなくても、従業員に福利厚生を提供できている企業は少なくありません。

  • フジテックの最寄りの事業所から車で20分もかかる公共の運動施設を購入する理由はありません。福利厚生の為であれば、例えば、会社から従業員に対して補助を出す方法などで対応できたはずです。

  • フジテックが取った決定を、一般的な慣行と比較して、評価することを怠っています。

 

4.     調査方法は限定的であった

調査報告書によると、調査方法は、取締役会議事録などの資料と内山社長を含む関係者からの聞き取り調査のみであったとのことです。電子メールを詳細に分析したとも、第三者に依頼して取引や関連する評価の妥当性を評価したとも思われません。また、他に誰にヒアリングを行ったか、何人にヒアリングを行ったかについても何ら触れられていません。

そのような詳細な分析がなされた記載がないことは、調査は結論ありきで行われたものであり、調査に信頼性がないことを示しています。

 

5.     フジテックはオアシスとのエンゲージメントに消極的だった

オアシスは、フジテックのガバナンスと経営を改善するために株主としてエンゲージメントしようと、何年も前からフジテックに手紙を送り、内山社長との面会を求めてきました。しかし、2022年3月にオアシスが関連者間取引に関する詳細な質問リストを送ってから、ようやくフジテックはオアシスが内山社長と面会する段取りを整えました。その後、内山社長は2度オアシスと面会しましたが、その際に、関連当事者取引の話題を提起しないこと、西村あさひ法律事務所の藤本弁護士を同席させるという厳しい条件が付されました。  その際、オアシスの質問に対して、藤本弁護士や他の役員が答えることが多く、内山社長の意見はほとんど聞かれませんでした。オアシスが出席したフジテック社外取締役との他の会議でも、藤本氏が再び出席し、頻繁に介入していたことも併せて、他の株主にお知らせしておきたく存じます。

 

II.               調査報告書のオアシスによる詳細な分析

オアシスが行った調査報告書の詳細な分析によれば、オアシスが主張している疑義の事実関係の調査として極めて不十分であり、寧ろフジテックのガバナンスの問題が深刻であることを更に浮き彫りにしていることが明らかです。

 

第1部 ドムス元麻布104号室に係る取引について

1.               ドムス元麻布の取得とその賃貸について

調査報告書において、このマンションに関するフジテックの記述は、あたかも内山家がフジテックの要請を受けてドムス元麻布104号室に入居したのであり、社長が顧客をもてなすために住居が必要だったかのように思わせるものです。これは全くの誤った解釈であり、実際、以下の5月30日付公表文の英語版では、当然のことながら、東京での営業強化のためにこのマンションを購入することを考えたのは内山社長自身であると述べています。(太字下線箇所ご参照)

“The reasons for the sale of Domus Motoazabu No.104 were one, that eight years had passed since its acquisition, and the initial objective of strengthening sales made by the president himself in order to improve the company’s presence in Tokyo metropolitan area had been attained,,,”

私たちは、日本で何百社もの企業に会ってきました。営業強化のために、一等地にある大きな超高級マンションを買ってそこに社長が住むことが必要と判断した企業はありませんでした。内山社長は、自分の立場と権限を濫用して、営業強化のためと称して、自分が住みたかったマンションをフジテックに買わせたのでしょう。

そうであれば、上場会社が取締役に対する住宅手当、住宅の家賃の割引、住宅の無償提供などの非金銭的報酬について株主の承認を必要とすると規定した会社法361条1項6号に抵触する可能性があると思われます。オアシスは、類似の取引や不動産業者へのヒアリングに基づき、ドムス元麻布104号室のマンションの年間賃料は3000万円を超えると推測しています。オアシスは、フジテックがレセプションエリアと居住エリアに分けたと主張したのは、賃料をフジテックの有価証券報告書上の関連当事者取引の開示基準である年間1千万円以下に設定するためであると考えています。また、そのアパートの面積を240平方メートル以下にすることで、フジテックは内山家に対して所得税法上の“豪華社宅”の認定を回避して家賃の割引を正当化しようとしたと考えています。

これは、内山家が超高級マンションに住み、その費用の大半をフジテックに負担させるためのゲームとしか思えません。会社法の規制を意図的に回避し、株主の承認を回避するための詭弁と考えます。

株主は、会社の公表文に騙されてはいけません。たとえ技術的に法律違反を逃れていたとしても、これは極めてお粗末なガバナンスであり、内山家だけを利するように設計されていることを、すべての株主は認識すべきです。フジテックの利害関係者は、テクニカルに法を犯しているかどうかよりも、もっと高いレベルのガバナンスをフジテックに求めるべきでしょう。

すべての株主は以下の質問をフジテックに直接問うて確認してください。

1)     なぜフジテックは、レセプション用のもっと小さなマンションを買ったり、豪華なオフィスに投資して一部をイベント用にしたり、或いは、他の多くの企業のように単にレストランで接待したりしないのでしょうか?

2)     なぜ、内山高一社長とその家族は、接待のためにマンションに住む必要があったのでしょうか?

3)     他の企業には必要ないのに、なぜフジテックには一等地の超高級マンションが迎賓施設として必要だったのでしょうか?

4)     マンションでのいわゆる「レセプションエリア」について、以下のような詳細なデータを提供していただけますでしょうか。

a.       レセプションエリアに使用されていた面積(単位:平方メートル)は?

b.       居住エリアに使用されていた面積(単位:平方メートル)は?

c.       居住エリアとレセプションエリアの区分けを示す写真や間取り図を提示することはできますか?

d.       2013年から継続してレセプションエリアを事業目的に使用していたことを証明する「客観資料」とは一体何ですか?

e.       レセプションエリアはどれくらいの頻度でお客様にどのようにご利用いただいていたのでしょうか?

f.         内山家は、レセプションゾーンを業務で使用していないときは、個人的な目的で使用していたのでしょうか?

g.       レセプションゾーンで具体的にどのお客さまをもてなしたか、記録はありますか?

h.       内山家とフジテックの間で、光熱費等はどのように分けられていたのでしょうか?

5)     内山一家が、この居住エリアに対して支払った賃料はいくらでしょうか?

6)     フジテックは、この地域の家賃相場をどの程度であると考えているのでしょうか?

7)     なぜフジテックは、内山家の支払った家賃が所得税法上の“豪華社宅”の規制を免れると考えているのでしょうか?

8)     なぜこの取引はコーポレート・ガバナンス上の観点から問題がないのでしょうか? 

 

2.     内山家の保有する法人へフジテックがドムス元麻布を大幅に値引いて売却した件

フジテックがドムス元麻布104の426.44  ㎡のマンションをわずか3億6900万円で内山家の内山雄介氏が代表の法人に売却したことに、オアシスはショックを受けています。2022年2月、ドムス元麻布西館の124  平方メートルのマンションが2億1300万円で売却されています。内山雄介氏が代表者を務める内山家の法人への安値でのマンション売却は、フジテックにとって企業価値の毀損であることは明らかです。

フジテックがマンションを売却することを決めた理由が何であれ、父親がフジテックの社長であるからといって、内山雄介氏に有利な条件で取引するのではなく、売却にあたっては、全株主にとって可能な限り最高の価格を実現することを目指すべきです。

調査報告書によれば、フジテックは内山雄介氏が代表者の法人に対して、「定評ある不動産会社2社」の平均価格を提示して売却しており、極めてお粗末なガバナンスであることがわかります。

独立した企業間取引であれば、フジテックは2つの価格の平均値ではなく、最高値を要求したはずです。オアシスは、2022年2月のドムス元麻布西館やその他の周辺の取引状況に基づき、ドムス元麻布104に7億3千万円以上の価値をつけています。これは、内山社長の息子である内山雄介氏が代表者の内山家の保有する法人がこのマンションに支払った3億7100万円よりも97%高い金額です。このことは、内山社長がフジテックを支配していること、そして、他の株主よりも自身とその家族のために権力を濫用した結果を如実に示しています。

株主は会社の難解な説明に惑わされるべきではありません。この取引は、内山家にのみ利益をもたらし、他の株主には不利益をもたらす、明らかなガバナンス違反です。

すべての株主は以下の質問をフジテックに直接問うて確認してください。

1)       なぜ、フジテックは内山雄介氏に最高値での買取りを求めなかったでしょうか?

2)       なぜ、フジテックはこのマンションを一般市場に出して高値で売却しなかったのでしょうか?

3)       査定はどこの不動産会社がやったのでしょうか?

4)       不動産業者を指名したのは誰ですか?

5)       不動産業者から提供された不動産価格の査定書を提供してください。

6)       この地域の他の取引は1㎡あたり170万円で、内山雄介氏が代表を務める法人がフジテックに支払った1㎡あたり88万円より97%高い金額でした。ドムス元麻布104が近隣のビルより50%も価値が低いとフジテックが判断した理由を教えてください。

7)       フジテックが社長の息子の会社にマンションを売りたいと言っている状況下で、定評のある不動産会社はどんな意味のある価格を提示するのでしょうか?

 詳細は、資料を直接ご覧ください

 

第2部:内山家の企業への貸付

調査報告書は、25年前の1989年に発生した内山社長が保有する法人等への保証・融資が2014年にようやく終了したことを理由に、その保証・融資を正当化しようとしているように見えます。会社側の説明では、赤字計上を避けるために、利益を創出することを目的としたセール・アンド・リースバックと思われる取引であり、それ自体、極めてお粗末なガバナンスであって、以後25年間、フジテックが内山社長の会社にお金を貸し続けたことを正当化する理由にはなりません。オアシスはこの取引の真の目的、すなわち、2003年9月30日に開始された貸付、および同日9月30日の内山社長の保有する法人からフジテックが大阪フィットを購入したその目的は、2003年7月23日に内山正太郎氏が亡くなって内山家がその相続税を支払うために行われたものではないかと考えています。フジテックは、利害関係者が取締役会の決議に参加しなかったので、この関連者間取引は問題なかったと主張しています。しかし、当時は取締役会の独立性が低く、独立取締役が増えた現在でも、内山家の支配力が明らかに過大であることは、フジテックをよく知る株主なら誰しも知っています。

繰り返しになりますが、フジテックの今般の回答は不合理な説明を数多く含んでおり、回答したというよりもむしろ、はるかに多くの疑問を生んでいます。

調査報告書の回答は、内山社長が保有する法人への融資は「正和開発興産が有する不動産と有価証券」を担保にしたものであると主張しています。しかし、調査報告書とは異なり、オアシスは正和開発興産と有限会社ウチヤマ・インターナショナルのいずれも、フジテックからの借入に対してフジテック株式を担保提供している事実は確認できませんでした。貸付が実行された2003年9月30日以降の変更報告書において、フジテック株式に担保が設定されたと記載した提出書類はありませんでした。また、オアシスは内山社長及び、内山社長が保有する法人が保有する不動産のほとんどを把握していますが、不動産登記簿によるとフジテックのための抵当権は設定されてはいませんでした。投資家が直接確認できるよう、オアシスは変更報告書と不動産登記簿を以下に公開しました。

また、調査報告書では、返済期限を延長するたびに、取締役会がウチヤマ・インターナショナルの財務状況やキャッシュフローを検討したとされていますが、これも誤解を招く表現であると改めて考えています。ウチヤマ・インターナショナルは、その保有する不動産について銀行のために抵当権設定をしていました。また、フジテックが担保を取らず、超低金利で融資を行ったこと、特にウチヤマ・インターナショナルが何度も融資の延長を申し出ていたことも、調査報告書には納得できる説明がありません。このような融資はそもそも不適切であり、会社の資金の使い方として間違っているとオアシスは考えていますが、フジテックの外部調達コストにわずか0.1%の上乗せで無担保融資があるのであれば、社員や株主は皆、フジテックから融資を受けたいと思うのではないでしょうか。調査報告書には、取締役会がウチヤマ・インターナショナルの財務状況やキャッシュフローを調査したとしか書かれていませんが、調査結果がどうであったかは報告書で明らかにされるべきです。

フジテックが土地の有効活用のために大阪フィットの土地を買い戻したという調査報告書の主張も、買い戻してから土地の使用状況に変化がないので、その理由としてなんら説得力がありません。

株主は内山社長と調査報告書に騙されてはいけません。フジテックは、将来のために投資することもできたはずなのに、手元資金の20%以上にもなる現金を、内山社長の保有する法人に無担保で貸し付け、内山家が買った土地を使い、その後、買い戻しています。他の株主よりも内山家に有利になるように企業統治がなされていたことは明らかです。

すべての株主は以下の質問をフジテックに直接問うて確認してください。

1)     正和開発興産またはウチヤマ・インターナショナルが本当に担保を提供したのであれば、担保契約の詳細を開示してください。

2)     ウチヤマ・インターナショナルが本当に担保を提供したのなら、どの有価証券や不動産をフジテックに担保として提供したのでしょうか?

3)     フジテックの外部調達コストにわずか0.1%の上乗せという超低金利の根拠を説明してください。

4)     なぜフジテックは、これらの融資がコーポレート・ガバナンスの観点から問題がなく、他の株主よりも内山家を優遇していないと考えるのでしょうか?

 

詳細は、資料を直接ご覧ください。

 

第3部:フジテック高輪ビル

英語であれ日本語であれ、調査報告書のこの部分の記載は意図的に複雑にしているように見え、その長さにもかかわらず、詳細な情報はほとんど提供されていません。重要な部分が欠落したまま、調査報告書でこの取引を是認したことに疑問を感じます。調査報告書では詳細な分析がなされていないため、この取引の分析は極めて困難を極めますが、内山社長がまたフジテックを利用したことを示すポイントは、以下のようにいくつもあります。

  1. 取締役会は「メリットとデメリット等を比較検討した上で、高輪ビル証券化スキームへの」投資を決議しているが、そのメリット・デメリットが何であったかの説明はありません。特に、以下に指摘しているデメリットを考えれば、取引に参加する合理性を疑問視せざるを得ず、また、フジテックにメリットもないように見えます。

  2. 2011年、SPCは借り換えが必要になり、なぜか家賃が43%もアップしてしまった(理由は不明)。

  3. フジテックはSPCの出資者であったが、フジテックが受け取るべきリターンの詳細な財務データは開示されていません。

  4. また、SPCを活用することで、関連当事者間取引を開示せずに済んでいます。フジテックのSPCへの参加に伴い、内山社長のSPCへの出資比率が関連当事者取引の基準となる50%を下回ったため、フジテックはフジテック高輪ビルの賃料を開示する必要がなくなりました。

  5. 2014年当時、行政主導の再開発が計画され、SPCの価値が高まることが予想されたにもかかわらず、(明確な理由はないが)フジテックはSPCの持分を1億7900万円でウチヤマ・インターナショナルに売却してしまっています。これにより、フジテックの代わりに内山社長がすべての利益を得ることになりました。

  6. 私たちは、持分の売却が大幅に値引きされたことを懸念していますが、詳細な情報がない限り、その売却価格を正当なものとして評価することはできません。

フジテックが株主を混乱させようとしても、この取引はコーポレート・ガバナンスが機能しなかった失敗の事例であり、フジテックと他の株主を犠牲にして内山社長に経済的利益を移転するものであることは明らかです。

特に、株式売却の理由については、精査しなくても問題であることは明らかです。調査報告書では、「首都圏の再開発状況とそれに伴うフジテックの営業状態の変化」を理由に売却したとされていますが、行政が再開発に力を入れれば、地価は上がるはずで、その利益を内山家にだけ与えようとしたフジテックの考えは奇怪としか言いようがありません。

調査報告書の記載は、オアシスの懸念を払拭するどころか、内山社長がフジテックや他の株主を利用し、フジテックを犠牲にして自分とその家族の利益を図ろうとしていたのではないかという、オアシスの疑念を寧ろ補強するものでした。内山氏は今回の定時株主総会で取締役として再任されるべきではありません。

すべての株主は以下の質問をフジテックに直接問うて確認してください。

1)     この証券化取引の概要について教えてください。

2)     もし取締役がこの取引を完全に理解しているのであれば、どうしてこれが良いガバナンスだと思うのか説明してください。

3)     この取引に問題がないと判断する経営上の根拠は何ですか?

4)     もともとフジテックは、SPCにいくら出資していたのですか?

5)     フジテックはSPCを何%保有していたのですか?

6)     ウチヤマ・インターナショナルはSPCの何パーセントを所有していたのですか?

7)     ウチヤマ・インターナショナルは、SPCにいくら出資したのですか?

8)     SPCの株主構成をお教え下さい。

9)     2006年8月10日と2011年7月14日の2回、取締役会で議論されたメリットとデメリットは何でしたか。

10)  SPCに含まれる資産・負債を教えてください。

11)  2011年、なぜ家賃が大幅に上がったのか教えてください。

12)  フジテックがSPCに投資し、その後、売却するに至った根拠を説明してください。

13)  この地域の再開発は、不動産価格にとって極めてプラスになるはずだったのに、フジテックは、なぜこれを早々に売却する理由としたのでしょうか?

14)  出資持分売却時のSPCの資産・負債の状況を教えてください。

15)  出資持分を売却する際に、第三者による評価を受けましたか?受けた場合は、その詳細を教えてください。そうでない場合は、その理由を教えてください。

16)  ウチヤマ・インターナショナルは、この持分を第三者に売却することで、どれだけの利益を得たのでしょうか。

 

詳細は、資料を直接ご覧ください。

 

第4部 アーバンウェル茨木

アーバンウェル茨木に関する調査報告書の回答も、疑問点は増えましたが、我々が当初指摘した疑問点への回答はほとんどありませんでした。

フジテックは長年、ウチヤマ・インターナショナルからアーバンウェル茨木の50室を借りていましたが、オアシスがフジテックへのエンゲージメントを開始した後の2021年にこれが突然5室に減らされました。このことから、フジテックは結局、50室を必要とせず、そのうち、内山家を支援するために家賃を支払っていたことがわかります。 フジテックや他の株主を犠牲にして内山社長に経済的利益が移転されていたのです。

調査報告書によると、フジテックは、非常に多くの部屋を借りていましたが、他の入居者が月額67,000円から73,000円を支払っているのに比べて、割安ではなくむしろ割高(月額73,120円)であり、しかも、その中に空室も含まれていました。これまで、50室の寮のほかに、年間家賃440万円程度の相談室も借りていました。現在は5部屋しか借りていませんが、それでもその談話室を5部屋のために借りており、フジテックが支払っている家賃の約半分に相当します。談話室を借りる人がいないため、フジテックは談話室を借り続けざるを得ない状況になっていると思われます。さらに、内山家が保有する会社は、これらの部屋について、11ヶ月分相当の敷金をフジテックに請求しており、これも通常の賃貸条件とは異なっています。

すべての株主は以下の質問をフジテックに直接問うて確認してください。

1)     2008年から2021年までの各年、毎月50室の利用率を教えて下さい。

2)     2021年から現在に至るまで、毎月5室の利用率はどうでしょう?

3)     談話室の用途は何ですか?5部屋しか借りていないのに、なぜフジテックはこれを借り続ける必要があるのですか?

4)     社員がどこに住もうが自由なのに、なぜフジテックは内山家が保有する法人から部屋を借りる必要があったのでしょうか?

 

詳細は、資料を直接ご覧ください。

 

第5部 フィットウィル彦根

調査報告書によると、フジテックは従業員の福利厚生のために利用料を支払い、最終的にはこの施設を購入したそうです。このような目的のために公共の娯楽施設を取得するという異例の措置は、私たちが知る限り、日本の他の企業では見たことがないものです。従業員の福利厚生に配慮する企業の多くは、従業員が自宅や会社の近くで運動できるように、スポーツジムの会員権や福利厚生のための補助金を従業員に直接提供します。しかし、フジテックは、会社から車で20分以上かかる公共娯楽施設を購入しています。

もっと言えば、フジテックがフィットウィル彦根の利用料を払っているのであれば、わざわざ建物を買って運営する必要もありませんでした。フジテックは利用料を払い続ければよかったからです。

フジテックがこの施設を購入したのは、内山社長が保有する法人が施設を売却したかったからであり、従業員の福利厚生のためではなかったとオアシスは考えています。内山社長が保有する法人が後悔している投資案件からの脱出先をフジテックが提供し、そして、同時に彼らに利益を与えているのであれば、それは健全なコーポレート・ガバナンスの姿ではありません。

すべての株主は以下の質問をフジテックに直接問うて確認してください。

1)     使用料を払い続けるだけでよかったのに、なぜフジテックは建物を買おうと思ったのでしょうか?

2)     フィットウィル彦根を購入することが、ジムの会員権や福利厚生として補助金を従業員に提供するよりも、社員の福利厚生に役立つと思ったのはなぜでしょうか?

3)     2009年3月期、2010年3月期のフジテック社員の「フィットウィル彦根」利用率はいくらでしょうか?

4)     取得後、何名の従業員が利用しましたか?

5)     この施設が従業員の福利厚生に役立つのであれば、内山社長が保有する法人が買収する前に、なぜフジテックはもともと買わなかったのでしょうか?

 

詳細は、資料を直接ご覧ください。

 

第6部 篠原祥哲会計士

フジテックはオアシスの指摘に一部回答していますが、未解決の問題が残っています。例えば、調査報告書では、旧契約では篠原氏に月額12万円の報酬が支払われていたとされています。しかし、篠原氏が代表社員を務める大阪駅前税理士事務所との新たな顧問契約では、いくら支払われているのかについては触れられていません。また、調査報告書では、オアシスが可能性として指摘した、内山家との関わりに関連する不都合な事実を示すものは確認されていないとされていますが、どのような調査や資料を確認して状況を把握したのか、中身については何も説明がありません。

すべての株主は以下の質問をフジテックに直接問うて確認してください。

1)     大阪駅前税理士事務所は、フジテックからいくらもらっていましたか?

2)     篠原会計士は、フジテックにどのようなアドバイスをされたのでしょうか?

3)     大阪駅前税理士事務所は、フジテックにどのようなアドバイスをしているのでしょうか?

4)     ドムス元麻布104号室を住居エリアとレセプションエリアに区分けする際、篠原会計士はこれに関するアドバイスに関わったのでしょうか?

 

第7部 庭師

調査報告書には、当人は勤務時間外に庭仕事をしたと書かれていますが、勤務時間の詳細については記載されていません。

すべての株主は以下の質問をフジテックに直接問うて確認してください。

1)     内山社長の私邸で庭の掃除をした後、車でフジテックの事業所に戻っています。フジテックの勤務時間はいつからいつだったのでしょうか?

2)     2018年4月から2021年6月まで、庭師はフジテックでいつ何時間、何日働いていたのでしょうか?

 

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おわりに

このように多くの関連当事者取引が存在していること、フジテックが行ったとする「調査」、そして、上辺を取り繕いながら、難解に仕立てた調査報告書、このいずれもがフジテックのガバナンスの欠如を示すものです。

内山高一氏は2002年から代表取締役社長を務めています。5月19日にオアシスが調査を公表して以来、さらに多くのフジテックの利害関係者がオアシスに内部告発を行っています。彼らは、内山氏の行動や事業に対する集中力と責任感の欠如に不満を述べています。フジテックは内山家の会社だから、結局は許されると思っていたのだろう、というのです。しかし、そもそも、フジテックは内山家のものだけではありません。従業員、顧客、取引先、行政、株主など、多くの利害関係者がいます。このような関連当事者取引は、内山家以外の誰の利益にもならないものです。

オアシスはフジテックとのやりとりのすべての記録に基づき、日常業務は岡田副社長をはじめとする経営陣によって運営されており、内山社長が解任された場合でも、引き続き適正に経営されると考えています。私たちは、すべての株主がガバナンスの欠如について内山社長に責任を取らせるべきだと考えています。内山社長はそう考えていないかもしれませんが、我々はその座にあるべき人ではないと考えています。

内山社長を解任し、実効的なガバナンスの欠如した時代を終わらせ、会社を発展させる時が来たのです。フジテックに明るい未来をもたらすために、私たちは多くのアイデアをもっていますが、それは新しいリーダーシップの下でのみ達成可能だと考えています。ガバナンスと成長を重視するすべての株主は、今回の定時株主総会で内山社長の取締役再任議案に反対票を投じるべきだと強く確信しています。